大判例

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東京地方裁判所 昭和30年(ワ)2293号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実〕原告が昭和二二年九月中一米国人から依賴された一千ドルの両替方を更に被告そめ子に依託して右一千ドルを同被告に交付したところ、同被告は両替金を原告に渡さずに行方をくらましてしまつたので、その後同被告の所在をつきとめた原告はこれと交渉のすえ、同被告は原告に対し金三十一万円の返還義務のあることを認め、これを昭和二五年一一月から昭和二七年六月までの間に分割払いすることを契約させ、かつその場にいた被告そめ子の夫たる被告義人も共に借用証に署名捺印して連帯保証をした。然し被告等はその一部の履行をしたのみで残余の履行をしないので、原告は本訴でその履行を求めた。被告等は、右消費貸借契約は、原告の強制によつてしたものであると争うほか、当時米貨を所持収受し、売買したり或はその仲介をする行為は、昭和二二年政令第一六五号の厳に禁止するところで、その行為は当然無効であるから、本件請求はその前提において法律上の原因を欠き、失当であると主張した。

〔判断〕判決は、本件消費貸借契約が原告の強制によつて成立したものでないと認定したうえで、次のように説く。

「もつとも本件消費貸借は、結局、前記米貨一千ドルの交付行為がその前提となつていることは前認定の通りであり、而して右行為は被告主張のような政令に違反することも明白である。従つて民法七〇八条にいわゆる不法原因給付か否かの問題が生ずる。不法の原因のため給付をなしたものは、給付の返還について法の保護を受くべきでないことは、まことに当然のことながら、この公益維持この目的維持のために反面個人にその違約を助長せしめる結果ともなる。従つて同法にいわゆる給付の返還を許さぬとする不法原因の認定の標準は、個人の義務違反という不徳義を認容してもなお、給付の返還を拒否する必要のある場合に限らねばならない。その意味において従来の判例が、単に取締法違反のみでは未だ同条の「不法原因」には該当せず、さらに進んで社会の倫理観念に甚だしく反するものとしているゆえんも理解し得るのである。前記政令は当時の国家の政策上重要な規定であるが、これに違反する行為を以て社会の倫理観念に著しく違背するものとは称し得ない。従つて当裁判所も、本件を以て不法原因給付として抗争する被告の主張は採用し得ないところである

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